【映画レビュー】竜とそばかすの姫について思うこと。

アニメ

【映画レビュー】竜とそばかすの姫について30代リーマンが思うこと。

こんばんは。
皆さんは細田守監督作品の「竜とそばかすの姫」はご存知ですか。

2006年に同監督の「時をかける少女」を見てからこの監督のアニメの虜になり、そこから作品がリリースされる度に映画館へ見に行っていました。

そう、個人的には超注目アニメだったのです。
実際に映像美他、「ここイイ!」となるポイントは山のようにありました!

しかし、私が年齢を重ねたからなのか、「おや?」となるポイントも多く…あった…気がしてまして…
そこら辺を個人的に整理するためにも本記事を書いております。

というわけで本記事は「竜とそばかすの姫」を褒めちぎる内容ではなく、割とツッコミまくっている記事となります。
ネタバレもかなりあります。
いや、というか多分映画見てないと以下内容は意味わからないかもです。

どうぞよろしく。

Uという50億人のユーザーを抱えてるサービスのコンセプトが「現実はやり直せない」

コンセプト全文は「現実はやり直せない。しかし、Uならやり直せる。もう1人のあなたを生きよう」です。
これ、なかなか闇の深いコンセプトなのでは無いかと思うのです。
「竜とそばかすの姫(以下竜そば)」は、現実はやり直せないというコンセプトを主人公が否定するというストーリー構成になっているので、このコンセプトはストーリー上「ヤバイ」コンセプトになっているのは分かるのですが、それでも50億人のアカウントがいる超巨大サービスのコンセプトとしてまずいのでは無いかと思うのです。
後述するジャスティス的な勧善懲悪ノリが大好きなUの住民は、このコンセプトを受け入れているのでしょうか。

Asの潜在能力を引き出す設定=現代人の「やりたいこと、向いてることが分からない病」からの逃げのように感じられる

どういうレベルの機能なのか分かりませんが、潜在能力引き出してくれるとか流石に都合良すぎませんかね。
Uでさえ自分が輝けなかったら、その人たちには才能がないってことになるんですかね。
あとは見出しにある通り、自分のやりたいこと・向いてることって何?ってなってる現代人の逃げの一手のようにも感じられました。
才能の有無が機械で分かるようになっちまったらそれこそやばい世界なのでは無いのか。

ベルがコンサート中に着ていた服?が小林幸子

ベルがコンサート中に着ていた水晶玉の服的な何かが小林幸子のステージ衣装にしか見えませんでした。
竜そばのメインターゲットは中高生だと思うので、小林幸子オマージュというわけではないと思うのですが、私にとっては紅白歌合戦の小林幸子でした。
いや、あそこまで派手派手では無いけれども。こじつけすみません。

ベルが竜に会いに行く理由が不明瞭

見逃してたらごめんなさいって感じなのですが、ベルはなんで竜にあれほど固執してたんですかね。
竜を探す理由は映画内で特に明示されていなかった…ような気がするんですよね。
コンサートは確かに邪魔されましたし、その時に互いを認知し合いましたけど
それだけで「ああっあの人が気になる!危険を冒してでも探したいわ!」ってならないと思うんですよね。
しかもすず氏には別で想いを寄せている相手がいるのに(まあ当初すず氏本人は「好きとは違うよ!」って感じの態度でしたが)。

ベルが竜に会えた理由が不明瞭

要するに、気になる鍵垢に接触しようと試みてたって事なんだと思うのですが、流石にストーカー気質過ぎませんかね?
私の中の「鍵垢に接触しようとしてる人」って、鍵垢のフォロワーだったり、フォロワーが呟いてる内容から推定を繰り返して特定頑張ってるイメージがあるんですが、すず氏がやってることってこれに近いことなのではないんでしょうか。
フォロワーが取り巻きのAIだったというだけで、やってることに変わりはないような気がしております。
あと、取り巻きAIが鍵垢への接触権勝手に与えちゃだめでしょセキュリティどうなってんの。

スキルセットがえぐい友達が居ないと成り立たないストーリー

純粋に友達のスキル高すぎませんかね。
PC操作、プロモーターとしての顔、金銭周りの管理(寄付してるとか言ってたけど本当だろうか)、変装スキルとそれで人を騙れる程度の話術…など。
これがUで才能開花させた結果なんだとしたらU凄いっすね。そこまで伏線なんだろうか。そんな訳ないよね。

イケメンで主人公を陰ながら守ってる系ヒーローの浮世感

あんな男子高校生いません。
10代が読みがちな雑誌掲載の少女漫画を読んでるみたいでした。

他登場人物の存在理由(ママさん会、友人二人)

別に正直いなくても良かったよね感があります。
原作脚本読めば存在意義が分かるようになるのでしょうか。
けど映画時点で存在理由が分かるようになってないと脚本としてどうなんでしょうか。
ポンポさん見習って90分でまとめていただきたい。

ジャスティスとかいう自警団の「アンヴェイル」という力

アカウントに顔出しを強制させるシステムが存在してるSNSってなかなかヤバイっすよね。
100万歩譲って運営がその権限を持っていたとしても、ジャスティスは運営ではない…ですよね?
彼らは自分らで勝手に自警団してるだけですよね?
スポンサー付いてるんだかなんだか知りませんが、普通スポンサーついててもその手の機能は解放されないと思います。
一般人の一存で個人情報モロバレとかあたまがおかしい。
コロナ警察のような「○○ヘイト」系の人たちの「特定作業」を暗喩してるのかなー、とも思いましたが、それにしても演出と表現方法の所為で陳腐に見えてしまいました。

DVオヤジの元に女子高生一人で行かせる短絡さ

これ正直一番ありえないポイントだと思ってます。
DVされてる子供を助ける為に、女子高生が一人で田舎を遠く離れた東京まで行くのってどうなんでしょう。
人助けは素晴らしいことですが、問題は親を含む周りの大人と友達が、突発ライブの成功と、竜の大体の住居特定(住所が分かったとは言ってない)が上手くいった勢いだけで、JK一人が助けに向かうことを許容していることです。
少し話を戻して、本編序盤にすず氏の母親だけが洪水に巻き込まれそうな見ず知らずの子供を助けるシーンがあるのですが、このシーンはなかなか残酷で、母親だけが人助けに向かってそれ以外の人間は全員傍観者として立ち尽くすという描写がなされます。
終盤のすず氏が竜を助けに行くシーンは、この母親のシーンと嫌な意味で重なってしまいます。
すず氏が母親で、ママさん会と友人がそれ以外の傍観者という立ち位置です。
つまりすず氏の周囲を取り巻く状況はなんら好転していないのではないか、と感じられてしまうのです。

相手はDV親父ですよ。助ける為に直接接触したらどう考えても暴力沙汰になることは目に見えていると思うんですが…。
あまりに当然のように助けに行ったので、自分の感覚がおかしいのかと不安になります。

DV親父はなぜすず氏のひと睨みでビビりまくってしまったのか

流石に弱すぎませんかね。笑ってしまいました。
まあ、実はDV親父=ジャスティスの親玉だったんじゃないかとも思いましたが、ちょっとそれを特定するには情報が足りないなあって感じです。

まとめ

他にもあった気がするんですが、とりあえず以上です。

ツッコミ所がある作品はそりゃ山ほどあるし、作り物なのでそれが普通だとは思うのです。
ですが、ツッコミを入れたくなる映画と、別に入れなくても満足できる映画の差ってなんなのでしょう。

細田監督の過去作品である「時をかける少女」や「サマーウォーズ」もツッコミ所のある作品だったと思います。
そしてその感想は今の年齢になっても変わりません。
つっこみたくなる竜そばと、そうでない時かけ・サマウォの違いってなんなのでしょう。

映画って、見た人の年齢・性別・人生経験、あとは見た時期、時代だったりで評価が変わると思うのですが、竜そばは私のそれら評価基準と合わなかったってことなんでしょうか。

けど氷菓の伊原摩耶花氏は「名作は最初から名作として生まれてくる」と言いました。
私はその考えに賛成で、読者次第で面白いかどうかが問われる作品は名作ではないのではないかと思ってしまいます。

あー、
なんつーか竜そばはとっ散らかってるんですんですよね。
テーマの根本としてすず氏の内面的成長があると思うんですが、その純粋なテーマが竜の存在によって曖昧になっている気がします。
さらに追加で同級生との青春恋愛事情も入り込んでくるので、余計に言いたいことがなんなのか分かりづらい構成になっています。
そういうのはどうでもいいから、すずがUで素顔のまま歌を唄えるようになるまでの軌跡を描くだけで良かったんでないの?と思ってしまうのです。

映像と歌がめっっっっっっっちゃ良かっただけに凄く勿体無いと感じてしまうのです。
あの映像と歌が、脚本の粗を隠すためのものではなく、脚本を引き立たせる為のものになるべきだと思ってしまうのです。

私の心は今、分かりやすく楽しい新海誠作品に惹かれ始めております。

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